眼瞼の病気と手術について
眼瞼下垂
原因・病態
眼瞼下垂は何らかの原因によって上眼瞼(上のまぶた)が下がってくる状態のことです。それにより上方の視野が狭く感じられたり、外見が悪くなったりする不都合が生じます。上眼瞼の挙上には上眼瞼挙筋(動眼神経支配)とミュラー筋(別名:瞼板筋、交感神経支配)の収縮が携わっており、これらどちらかの筋肉やそれを支配する神経の機能が落ちることで起こります。原因は大きく先天性と後天性にわけられます。
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先天性眼瞼下垂
出生直後からみられる眼瞼下垂で、様々な原因によるものがありますが通常みられるものは上眼瞼挙筋の働きがうまれながら不良なことによるものです。片側性と両側性があり、片側性が多くの割合を占めます。下垂のある方の眼では、下方でしかものが見えないため、それをカバーしようとして顎をあげた姿勢をとることが多くなり、また眉毛をあげてものを見るようになります。
治療の基本は手術ですが、生後6ヶ月を超えればいつでもできるため、慌てて手術する必要はありません。しかし、眼瞼下垂の程度が強い場合、時に視力の発達に影響するため、視機能の評価や合併症の有無とも合わせて眼科を受診して手術の必要性や時期について判断してもらう方が良いです。 -
後天性眼瞼下垂
後天性で最も多いのは、加齢によるもので、上眼瞼挙筋の腱の伸展によって起こります。また、最近ではコンタクト装用者(特にハードコンタクト装用者)が増加しており、同様の原因により眼瞼下垂が起こります。
後天性ではこの他にも外傷や神経麻痺によるもの(脳動脈瘤や糖尿病などによる動眼神経麻痺や肺癌などに伴う交感神経麻痺(ホルネル症候群))、神経と筋肉の間のトラブルである重症筋無力症などがあり、これらは他の眼の症状や全身症状を伴うことも多いです。
また、一見すると眼瞼下垂のようにみえる眼瞼皮膚弛緩症(過剰な皮膚が上眼瞼を越える)や甲状腺眼症のように片眼の瞼裂開大により相対的にもう片方の眼が下垂しているようにみえることもあるため、注意が必要です。
治療は手術であり、比較的挙筋の機能の良い眼瞼下垂(加齢性、コンタクトレンズ、ホルネル症候群など)は回復が見込めます。その他の後天性では原因疾患による挙筋機能の程度によっても手術方法は異なり、その効果にも限界があります。
眼瞼内反症
一般的に「逆さまつげ」と呼ばれるものです。まつげが何らかの原因で角膜(くろめ)に接触した状態をいいます。
まつげは本来、まぶたの縁から外側(眼球とは反対方向)へ自然にカールして眼球にあたらないようになっています。内反症は「睫毛乱生」「睫毛内反症」「眼瞼内反症」の3つの病名を含んでいます。
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睫毛乱生
まぶたの向きには異常がなく、正常なまつげの中で何本かが眼球に向かって生えている状態を指します。まつげの毛根の周囲で起きた炎症による傷跡などが原因で、まつげの生える方向が不規則になってしまうものです。 -
睫毛内反症
乳幼児において、まぶたの向きが正常にも関わらず、下まぶたの皮膚や皮下脂肪が過剰なことが原因で、盛り上がった皮膚によってまつげが眼球の方向に押し込まれている状態です。4~5歳になって顔が引き締まってくると治ることが多いため、あまり程度がひどくなければ経過をみます。 -
眼瞼内反症
まつげだけではなく、まぶた全体が内側(眼球の方向)を向いてしまう状態です。主に加齢によって、下まぶたを支えている組織やまぶたを閉じる筋肉がゆるんだり、まぶたの皮膚がたるむことが原因とされています。
■内反症の症状
角膜に常に傷がつき、ゴロゴロしたり涙が出たり、充血が続くことがあります。重症の場合は視力が低下することもあります。
■内反症の治療
症状がひどいケースでは手術が必要となります。
逆さまつげを切ったり抜いたりすると、今度は先がとがったまつげが生えてきて角膜を傷つける場合があるので、自己処理は注意が必要です。
内反症に似た症状として以下のようなものが挙げられます。
ドライアイ、角膜感染症、角膜びらんなど。